技術・人文知識・国際業務の資格概要

① 在留資格の趣旨
【技術・人文知識・国際業務とは】
この在留資格は、特定の専門的な知識や技術を活かした職務に従事するための在留資格です。大きく以下のとおり分類されます。
- 理工学系の知識を活かす「技術分野」
- 法律や経済、社会科学など人文系の知識を用いる「人文知識分野」
- 通訳や翻訳、海外取引などの国際的な業務に従事する「国際業務分野」
「技術・人文知識・国際業務」は、通称「技人国(ぎじんこく)」と呼ばれることから、この記事では「技人国ビザ」という用語で説明します。
【従事できる職業】
技人国ビザでは、外国人がこれまで学んできた知識、仕事で培ってきた経験、または母国の文化や言語に関する知識と関連性のある業務であれば従事できます。機械工学等の技術者、通訳、デザイナー、私企業の語学教師、マーケティング業務従事者などがあげられます。
【該当しない職業】
専門知識を必要としない業務や、外国人本人の学歴・職歴や文化などと関連しない業務は、技人国ビザの資格要件には該当しません。また公私の機関との契約に基づいていない場合も基準に該当しません。さらに特定技能や技能実習がが対象とするような単純労働も、技人国ビザの資格要件からは外れます。
【行政書士への相談と依頼した場合の相場】
技人国ビザを得るためにはいくつかの条件があります。職務内容と大学/専門学校の専攻との関連性、経歴要件、実務経験、有効な雇用契約、勤務する会社の安定継続性などを証明するための提出書類を準備なければなりません。自分たちで許可を得るこことももちろん可能ですが、多くの時間を費やします。費用がかかるというデメリットはありますが、専門家である行政書士に依頼するのもひとつの方法です。料金の相場は、認定証明書交付申請・変更許可申請で6万円〜20万円となっています。
② 技人国ビザの要件
【学歴または実務経験】
●技術分野(理系職)
- 大学や専門学校における理系学部の卒業、または10年以上の実務経験
- 対象職種例:ITエンジニア、機械設計、システム開発など
●人文知識分野(文系職)
- 大学/専門学校卒業、または10年以上の実務経験
- 対象職種例:経理、マーケティング、法務、貿易業務など
●国際業務分野
- 3年以上の実務経験(通訳・翻訳・語学指導など)。ただし大学で専攻していれば経験は不要
- 対象職種例:翻訳・通訳、海外営業、外国語教師
【勤務先企業/事業主と申請者の間に有効な雇用契約があること】
●契約形態
正社員・契約社員・派遣社員でも可(アルバイト・パートは不可)
●給与
日本人と同等以上であること(最低20万円程度が目安)
●待遇
日本人と同等以上の待遇(最低でも月給20万円程度が目安)
【勤務先企業/事業主に事業の継続性/安定性があること】
●事業の実態
登記事項/事務所証明書類/業務証明書類により証明
●財務状況
健全であること
●売上/取引
安定していること
●社会保険・労働保険
適切に加入していること
●外国人雇用
必要性が証明できること
必要書類・審査期間

③ 必要書類の例(在留資格変更許可申請の場合)
- 在留資格変更許可申請書
- 証明写真
- 在留カードの写し
- パスポートの写し
- 履歴書
- 卒業証明書
- 成績証明書(必要に応じて出席証明書も)
- 日本語能力を証明する合格証の写し
- その他経歴/能力の証明資料
- 前年分の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表写し
- 雇用契約書
- 労働条件通知書
- 申請理由書/雇用理由書
- 履歴事項全部証明書
- 会社案内(パンフレット等)
- 直近年度の決算書
- その他説明資料
④審査期間
認定申請、変更申請の場合は1〜3ヶ月が目安ですが資料の追加提出などで1ヶ月以上遅れることもあるります。事前に書類をしっかり準備することで、審査期間を短縮できる可能性もあります。お急ぎの場合や手続きに不安のある方は、行政書士に相談するのもお勧めです。
不許可事例
⑥不許可事例
【学歴や職歴が要件を満たしていない】
事例① 情報技術者として申請したが、IT関連学位がなく実務経験も10年未満
事例② マーケティング職として申請したが、経営関連学位がなく実務経験も10年未満
- 理由:学歴や実務経験の要件を満たいていない
- 対策:情報系学部を卒業しているか、実務経験があるかどうかについて確認する必要があります。実務経験の場合は、正確な証明書を添付しましょう。
【職務内容が「技人国」に該当しない】
事例① 「通訳」として申請したが、実際の業務が事務や接客を含んでいた
事例② 「エンジニア」として申請したが、単純なデータ入力業務が中心だった
- 理由:業務内容が「技術」「人文知識」「国際業務」のいずれにも該当しない
- 対策:雇用契約書等で職務内容を明確に記載し「技人国」の要件に合致することを示し、職務内容の適正さを証明する必要があります。
【勤務先の事業の安定性・継続性が疑わしい】
事例① 設立直後の会社で売上実績がなく、申請したが不許可
事例② 会社が赤字続きで、直近の決算書が審査で問題視された
- 理由:経営状態が不安定なため、外国人雇用を継続できる保証がないと判断
- 対策:直近の決算書(できれば黒字)や納税証明書を提出し、事業の安定性を証明しましょう。まだ売上実績が少ない場合、実現可能性を正確に見積もった事業計画書/説明書を提出し、事業の見通しを説明します。
【日本人と同等以上の給与が支払われていない】
事例① 申請者の給与が月額15万円と低すぎたため不許可
事例② 日本人よりも低い賃金を提示していたため不許可
- 理由:「日本人と同等額以上の報酬」が条件(月20万円以上が目安)。外国人だから安く雇う、といったようなケースは不許可
- 対策:日本人と同等の給与水準(20万円以上推奨)を設定し、あわせて雇用契約書に記載する給与額が適切か今一度確認しましょう。
【偽装雇用・不正申請】
事例① 実際には働かないのに「雇用契約書」を偽造して申請
事例② 「エンジニア」と偽って申請
- 理由:入管は厳格に審査を行い、不正が判明すれば即不許可。今後のビザ申請も厳しくなる
- 対策:嘘の職務内容での申請は厳禁です。正しい内容で申請しましょう。また入管が求める追加書類には誠実に対応しましょう。
まとめ

記事作成:浅野 長慈 (在留資格申請取次行政書士)
地方公共団体勤務の後、海外人材紹介会社、国内監理団体にて外国人材ビジネスを経験。2024年、アンコール事務所を開設。